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高2教養総合Ⅰ PISⅠ(トレーニング科学)

教養総合Ⅰ Project in Science 「トレーニング科学」では、様々な体力要素を高めるトレーニング、そしてその背景にある解剖学的知識や生理学的知識等を、講義と体験を通じて概論的に学習しています。本講座では、研修期間において特別授業と実地踏査を行いました。

10月21日は教室における座学の他、「スポーツ栄養学」と関連させて、家庭科教室において調理実習を行いました。当日は家庭科の齋藤和可子先生にご協力いただき、「補給食」としてのピザを生地から作りました。班分けして3種類のピザを作り、おいしく実食した後には、各班のトッピングはどのような栄養成分の補給を意図しているのか、含有される栄養成分にはどのような作用があるのか等を調査、発表してもらいました。身体機能を維持・向上させていくためには、ただ食物をお腹に入れればよいのではなく、含有する栄養成分の作用や含有量、1日の目標摂取量等を意識することが大切であることを再認識できたと思います。

10月23日は、「スポーツ心理学」の学習と体験、テーピング実習、さらには、足首にテーピングを施した状態での「SAQ(Speed/Agility/Quickness)トレーニング」の体験等、普段の2時間連続授業では時間が足りず実施できない内容を中心に、実習形式で授業を行いました。スポーツ心理学に関しては、「あがり」という心理状況や「クラスタリング」という自己分析の方法、そして有名アスリートの例を挙げて「ルーティーン」、「イメージトレーニング」等について学び、その後、「呼吸法」や「漸進的筋弛緩法」といったリラクセーション法、集中力を高める「マインドフルネス」という実際のスキル・技法を体験してもらいました。「メンタルトレーニング」というと、トップアスリートのみが実践する「敷居の高い」ものという印象が強いかもしれませんが、精神面も若年層アスリートが高めるべき「体力要素」のひとつであり、私個人としては中高生や指導者も是非学んでみるべきと考えています。興味をもった生徒は、これを機にそれぞれの競技・生活場面に少しずつでも取り入れてほしいと思います。

テーピング実習では、まず足首の関節の構造とテーピングの理論を学習し、その上で生徒同士互いにテーピングを施し合いました。固定用の非伸縮性テープを、形状が複雑な足関節に圧迫や弛みなく、かつ効果的に貼付するには習練が必要であり、ほぼ初体験の生徒たちは非常に難儀していました。

その後は、苦労して施した足関節捻挫(再発)予防テーピングを活かし、そのままの状態で敏捷性向上を図る「SAQトレーニング」を体験してもらいました。SAQトレーニングは近年一般化しており、参加生徒の多くが部活動を通じて「ラダートレーニング」等を経験していたことから、少し難易度の高い種目も織り交ぜて実施しましたが、テーピングの甲斐もありケガなく終えることができました。

10月24日は「国立スポーツ科学センター(JISS)」および帝京平成大学中野キャンパスで実地踏査を行いました。午前中はJISSにおける施設見学を通じ、日本のトップアスリートの競技力向上を支えるサポート体制や設備・器具について説明を受けました。酸素濃度の制御が可能な宿泊室、最新スポーツ科学の粋を集めたハイパフォーマンス・ジムや様々な実験室等、実際にトップアスリートが利用する施設・設備を見学し、生徒たちは驚きの連続でした。また、撮影の禁止や入室制限等の見学ルール、日本を代表する選手のトレーニング・練習場面との遭遇等もあり、終始緊張した面持ちで説明を聞いていました。

見学後は、施設内のビュッフェ形式のレストランを利用して昼食をとりました。ここでやっと緊張が解けたのですが、日本を代表するアスリートが利用するレストランだけに、ひとつひとつのメニュー、食材、調味料にいたるまで含有される栄養素の量やカロリーが明示され、さらには管理栄養士に摂取した内容を画像で送る機材なども常設されており、生徒は最後まで驚かされていました。限られた時間ではありましたが、普段授業において学んでいる内容との結びつきや競技スポーツにおける科学の介入が不可欠さを実感し、知見を広める好機となりました。

午後は帝京平成大学に移動し、現代ライフ学部経営マネージメント学科トレーナー・スポーツ経営コースにおいて教鞭をとっていらっしゃる園部豊氏によるスポーツ心理学に関する講義を聴講しました。また、リラクセーション法のひとつである「自律訓練法」、チームビルディングと関連したコンセンサスゲームの「NASAゲーム」、心理的競技能力診断検査「DIPCA」等の体験・受験等、実習も盛り沢山な内容でした。現在、トップアスリートのメンタルサポートも担当されている園部氏ですが、とても気さくなお人柄で、自身の部活動等に関する生徒たちからの質問にも、ひとつひとつ丁寧に回答してくださり、あらためてスポーツと心理学・メンタルトレーニングの結びつきを強く感じていたようでした。この日は午前、午後で2つの見学・体験先をまわるタイトなスケジュールでしたが、非常に内容の充実した1日となりました。この期間の学びが、2学期以降取り組む生徒個人での研究に活かされることを期待しています。

文責:朽木康介