教養総合 News&Topics 教養総合Ⅰ フクシマ実地調査報告
教養総合Ⅰ「フクシマ・オキナワを通して近代化・科学技術を考える」の授業履修者20名は、10/26-28の2泊3日の日程で福島県で実地調査を行いました。
1日目は常磐線泉駅に到着後、常磐炭鉱の歴史に関して、いわきヘリテージツーリズム協議会の熊澤幹夫さんに常磐炭礦選炭場跡や内郷地区を案内いただきました。「最盛期の路地は昼夜問わず人であふれており、名だたる芸能人が興行に訪れていた」という内郷地区ですが、エネルギー革命を経て、現在は共同便所が残る炭鉱住宅で人々が細々と生活している様子を生徒は目の当たりにしました。その後富岡町夜ノ森地区や大熊町の大野駅前をフィールドワークし、「復興」という言葉の裏側でどのようなことが起こっているか、常磐線の新しい立派な駅舎とその前にある広大な更地を前に考えを深めました。さらに浪江町まで北上したのちに、元東京電力社員で、震災時福島第二原発で働いていらっしゃった吉川彰浩さんに、「加害者としての想い」や「原子力とどのように向き合うべきか」といったテーマでお話を伺いました。夜のふり返りでは、「まちづくりとは何か/どうあるべきなのか」という論点から、活発に議論が行われました。
2日目は、宿舎であるいこいの村浪江のすぐ裏手にある帰還困難区域のフィールドワークから始まりました。太陽光パネルに埋め尽くされている耕作放棄地を見たり、2022年8月30日に帰還困難区域からの解除が行われた双葉駅前を実際に歩いたりしながら、これからこの地域がどのように変化していくのか、そういった中私たちは何ができるのか、考えを深めました。その後、福島水素研究エネルギーフィールド、東日本大震災・原子力災害伝承館、津波の被害を受けた請戸小学校などを見学し、高台となっている大平山霊園では、自分自身の命を守るために何が必要か、というお話をまちづくりなみえ事務局次長の菅野孝明さんよりしていただきました。さらに東京電力廃炉資料館の見学の後、富岡町文化交流センターにて東京電力社員の方との対話を行いました。生徒からは、賠償についての質問や今後の地域づくりに東電としてどのように関わろうとしているのかといった鋭い質問が飛び交っていました。また福島県立ふたば未来高校では、同世代の生徒たちと交流を行い、東京の人たちがどのような「フクシマイメージ」を持っているのかという逆質問も受けました。夜のふり返りでは、「フクシマ」が孕むの複雑性と可能性をどのように伝えることができるのかという議論が夜遅くまで行われました。
3日目は、福島民報いわき支社長の円谷真路さんより、「フクシマ/ふくしま」をどのように地元紙が報じてきたか、お話しいただきました。生徒からは汚染水の処理をめぐって地元の人がどのように考えているか、報道の役割とは何かといった質問が出ました。その後楢葉町に移動し、ならはみらい移住促進係の平山将士さんにコンパクトタウンをご案内いただいた後、「廃炉作業に挑む技術革新と新たな産業構造は地域への理解を得られるか」「東京から派遣されてくる東電社員をはじめとしたみなし居住者と地域コミュニティとの融和は可能なのか」といったテーマでチームごとにディスカッションを行いました。生徒からは「肩書」をはずして行動することの可能性/不可能性とそれらをバックアップするコミュニティのあり方について、議論が行われました。さらに昼食後にひろの未来館にて、全員がこの実地調査を通して感じたことを発表し、一人ひとりに対して3日間フィールドパートナーとしてご案内いただいた菅野孝明さんにコメントを頂きました。このアウトプットの時間は当初2時間を予定していたのですが、生徒たちの福島に対する「想い」はとどまらず、予定を大幅に延長して帰りのいわき駅に向かうバスの中でも行われ、3時間近く続きました。
福島で学んだことをふまえ、生徒たちはこれから次の実地調査先であるオキナワについて学んでいくこととなります。フクシマとオキナワにどのような共通点があるか、私たちが当事者としてこの問題にどのように向き合っていくことができるか、考え続けていきたいと思います。
最後になりましたが、このプログラムを実施するにあたり福島県庁ならびに福島県観光物産交流協会のご協力をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
(文責:引率教諭 川北慧)